草書の手本だけではなく、書に関する名言を多く残している孫過庭の書譜にこんな言葉があります。
【翰逸神飛】
〜翰逸(はし)り、神飛ぶ〜
筆が生き生きと動いて、心が翔んでいるような境地に到達するという意味です。
筆が生き生きと動いてくれるためには普段のお手入れも大事。
ということで、今日は筆の洗い方マニュアルをお送りします。
根本に墨を溜めない!
筆を洗う上で一番大切なことは「根本に墨を溜めない」点だと思っています。
根本に墨(正確には墨汁に含まれる合成樹脂)が残っていると、筆割れの原因となり気分良く練習が出来ません。
墨汁に含まれる合成樹脂が主な原因なため、磨った墨であればほぼ筆割れとは無縁なのですが、自宅に墨磨り機でもない限り毎回擦ってから練習するのは効率的とは言えません。
*参考*
【呉竹 墨磨り機大】
動画で実演
まずはざっと動画で洗い方をお送りしました。
以下、ポイントを解説します。
<シーン1>ぬるま湯で優しく洗い流す
まずはざーっと洗い流します。できればぬるま湯の方がいいと思います。冷水よりも温度の高い方が墨汁に含まれる合成樹脂を溶かしてくれるはず。
シンクの底でこのように洗う方法もあるようです。
(感情論になるのですが)何だか筆がかわいそうなのと、シンクの底に料理のカスなどがあると筆に臭いが移りそうなのであまりおすすめ出来ません。
<シーン2>根本を摩擦でゴリゴリ
うまい表現が出来ないのですが、このシーン2が一番重要です。
このゴリゴリパワーで根本の墨を洗い出します。
筆の真ん中よりやや根本よりを指で固定して、根本をゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリした後(もしくはゴリゴリしながら)水で流すと、「まだこんなに墨残ってたの?」と思うくらい墨が出てきます。
シンクの底で押し付けるように洗うのはかわいそうと思うのですが、このゴリゴリは特に何も思いません。筆は意外と強いもの!
最後に干して乾燥させます。
練習した書道半紙などを使って、ざっと水分を拭きます。
最後に吊るして乾燥させて完了となります。おおよそ半日ほどでサラサラに乾きます。
このように筆先にいくにつれて広がっている状態になっていると理想的です。
以上、動画と写真で筆の洗い方と解説しました。
筆の洗い方は先生によって違うと思いますが、筆を大切にするという点は皆さん一緒だと思います。筆が綺麗な状態だと次の練習も気持ち良くスタートできますね。
おまけ
そうはいっても筆洗うのが面倒だなぁ…という方へ。
多い時は1日に20本弱洗っている私。筆を洗う作業は無になれるので好きなのですが、流石に10本超えると「ひえぇ」となります。
そんな時は足ツボを刺激しながら洗っています。筆が洗い終わる頃には足のむくみもスッキリ!(笑)
好きな音楽聴きながら筆洗ったり、料理しながら筆洗ったり。何か自分の好きな事と抱き合わせでできるといいかもしれませんね。
〜筆は大切に〜
そうは言っても筆は面倒!そんな方は筆ペンをおすすめします。
もっと良い洗い方あるよ!というご意見などお待ちしています。