臨書のコツ vol.2、今回の記事のテーマは〜点画の距離・軸の移動・太細の強弱〜です。
「臨書しているけど、どこに着眼すればいいのか分からない」
「文字が大きくなってしまい、バランスがおかしい」
「臨書を上達させるにはどうすればいいの?」
という方は、ぜひご覧ください。
より理解力を深めたい!という方は、記事を読み始める前に、半紙やノートに上記古典文字を臨書してみてください!
臨書をしてから本記事を読んでいただくと、より理解が深まると思います。
・
・
・
以下より映画でいうところのネタバレが始まります
・
・
・
文字を観察するテクニック
臨書を上達させるためには、何よりも「文字をじっくりと観察」する必要があります。
その観察をする上で、注意すべき点をまとめていきます。
↓以下、第一回目の記事です。
3.点画の距離に気を配る
点画の距離感はとても大切です。
点画というのは
A.完全にくっついている
B.わずかに接している
C.完全に離れている
D.くっついているが、少しずれている
という距離感の違いがあります。
下記画像「白」「馬」を例にとり確認してみましょう。
A.完全にくっついている
B.わずかに接している
C.完全に離れている
D.くっついているが、少しずれている
この距離感をどのくらい取るかで出来上がる書の雰囲気は変わってきます。
書道の世界では「不即不離」の法則とも呼びます。
では古典を見てみます。
虞世南「孔子廟堂碑」より〜皇帝〜
赤丸の箇所に点画の距離感があることが分かると思います。
上記画像の半紙上が点画を全て均等にくっつけてしまった例です。
下段は古典の距離感に着目し、距離感を作った文字です。
下段の「皇」の方が、文字が生きている印象を私は受けます。
毎度おなじみのセリフですが、この距離感は古典や書体によって変わってきます。
「えぇ〜じゃあどうやって覚えればいいの?書道って曖昧だなぁ、何か1つに決めて欲しいよ…」
と思ってしまうのは、言語化に慣れてしまった現代人の先入観なのかもしれません。
許容範囲が広くて自由、多様性に満ちていると考えて色々な作風・古典に触れて目を肥やすといいと思います。
4.軸の移動を発見する
続いては文字の軸の移動です。ちょっと難しいので先に解説画像を出してみます。
文字の上部が左側へ、文字の下部は右側へずれているのが分かります。
書道の世界では「重畳法」(ちょうじょうほう)とも言います。
特に縦に重なる部分から成る文字(炎・宮など)で、よく見られるバランスです。右下に重心が寄せることで文字が安定する効果があります。
「重畳法」は前回の記事でご紹介しました古典、九成宮醴泉銘によく見られます。下記画像の「泰慶」の2文字でも同様のバランスが発見できます。
ずらし過ぎすると当然崩れますので、ちょっとした変化を狙いましょう。隠し味程度です。
【ひぐらし書道Instagram】
〜この古典のこの部分が好き〜
文字フェチVol.14
でも「中心ずらしの技」として紹介しています。合わせてご覧ください。
5.線の太細を使い変化を出す
少し難しいコツが2回続きました。
次は「太細の強弱」です。
米芾「蜀素帖」より〜霄恥〜
米芾の蜀素帖は1つの文字の中で線の太い細いの変化がとても大きい古典です。
上記画像の青い部分(文字の2・3画目)は線がかなり細くなっています。逆に赤い部分は線が太く、隣接する点画とかなり密になっていることが分かります。
太い線と細い線の大きな差によって、文字が密集する部分(密)と余白が多くなる部分(疎)の2つが生まれます。
この差が強弱となり、文字に変化やリズム感を出してくれます。
書道の世界では「疎密の変化」とも言います。
太細の差は中途半端だと曖昧になってしまうので、太い線はおもいっきり太くし、細い線は出来る限り細く書くと良いでしょう。
文字を書く時間と同じくらい観察時間を設けましょう
①点画の距離感を観察する / 「不即不離」の法則
②軸の移動を再現し、文字を安定させる / 「重畳法」
③線の太細の強弱をつけ、文字に変化を出す / 「疎密の変化」
以上3点に絞って、最初の記事ではご紹介しました。
筆に墨を付けて、すぐに文字を書き始めるのではなく、まずは観察する時間がとても大切です。
この文字を観察するというのは、古典臨書に限らず、先生のお手本を見る場合でも、またペン字や硬筆の場合でも有効的です。
この記事が1人でも多くの書道・ペン字愛好家に役立つことを祈っています。
では次回もお楽しみに。
参考手本
今回紹介しました古典文字の臨書参考手本です。今回のポイント以外のことを墨で追記しています。練習のお役に立てればと思います。
左:虞世南「孔子廟堂碑」より〜皇帝〜 右:米芾「蜀素帖」より〜霄恥〜
実物大の手本が欲しい方いましたらカラーコピーにしてお渡しします。
カラーコピー代が申し訳ないという心優しい方は、何か些細な差し入れと交換ということで(笑)ご遠慮なくどうぞ。